壺齋散人の 美術批評
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クマエの巫女:ミケランジェロ「システィナ礼拝堂天井画」




クマエの巫女は、ウェルギリウスの「アエネーイス」に冥界への案内者として登場する。また、ローマの神話では、アポロンから1000年の寿命を授けられたが、若さを保つ方法を授からなかったので、年をとって皺くちゃとなり、やがて萎んでいったと伝えられている。

クマエはイタリア半島におけるギリシャの植民地で、いまのナポリの北側にあった。クマエの巫女はギリシャからローマにシビュラの書といわれる託宣本を伝えたとされる。これに関してディオニュシオスなどは、クマエの巫女が九巻からなる託宣本をタルクィニウス帝に法外な値段で売りつけたと言っている。

ミケランジェロはクマエの巫女をシワだらけの顔の老婆として描いた。彼女に関する老醜の伝説を踏まえたのだと思われる。だが、顔にはシワはあるものの、体つきはがっしりとしており、とても萎んでいるようには見えない。

彼女が開いているのは、シビュラの託宣本なのだろう。背後の裸の子供も、同じような書物を手に抱えている。



クマエの巫女のシワだらけの顔に比べて、裸の子供たちの身体は、あふれるような若さに満ちている。



これは、巫女の背後に描かれた男女一対のプットである。





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