壺齋散人の 美術批評
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ユディットとホロフェルネス:
ミケランジェロ「システィナ礼拝堂天井画」




システィナ礼拝堂の天井画は、天井中心部を飾る創世記の逸話を描いた部分、それを囲む預言者たちの像の部分に接して、更にその外周部に三角形で囲まれた部分がある。その三角形の部分のうち、天井の四隅にあたるところ(ペンデンティヴと呼ばれる)に、ミケランジェロは、旧約聖書の中の、ユダヤ人の救済についてのエピソードを描いた。「ユディットとホロフェルネス」はその一つである。

旧約の「ユディット記」によれば、ユディットは信仰のあついユダヤ人の寡婦であった。アッシリアのネブカドネサル王が、司令官のホロフェルネスを遣わしてユダヤを攻撃させようとしたとき、ユディットはアッシリアの武力を恐れて降伏しようとするユダヤ人たちを励まし、自らホロフェルネスの接待役を買って出て、隙をみてホロフェルネスを殺し、アッシリア軍の士気を打ち砕こうと思った。

彼女の目論見は成功し、ホロフェルネスと二人だけになったときに、酔いつぶれたホロフェルネスの首を彼の短剣で切り取り、その首を侍女と共に持ち帰って、ユダヤの人々を励ました。一方、司令官が殺されたことを知ったアッシリア軍は、士気を失い退却した。その結果、ユダヤは滅亡を免れたのである。

ユディットの勇気は、キリスト教徒の敬愛するところとなり、多くのキリスト教徒の画家がくりかえしユディットを描いた。なかでも有名なのは、クラナッハである。彼が描いたユディット像は数十点に上ると言われる。



ミケランジェロは泥酔して首を切られて横たわるホロフェルネスと、彼の首を侍女と共に持ち去るユディットを描いている。ユディットたちが持ち運ぶホロフェルネスの首は、ミケランジェロ自身の顔だとされる。





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