壺齋散人の 美術批評
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シャイム・スーチン:モディリアーニの肖像画




シャイム・スーチン(1893-1943)は白ロシアのミンスクにあったユダヤ人居住地で生まれ、1910年から三年間リトアニアのヴィリニュスで絵を学んだあと、パリに出て来た。間もなくモディリアーニと知り合い、エコール・ド・パリの一人としての道を歩むようになる。

モディリアーニが貴族的な雰囲気を漂わせていたのに対して、スーチンは手で鼻をかみ、頭には虱をわかせているなど、生まれの良くないところを感じさせた。それでも、同じユダヤ人同士ということもあったのだろう、モディリアーニはなにかとスーチンの世話を焼いた。スーチンが、絵が売れずに窮乏しているのを見かね、知り合いの画商にその絵を買い取らせてやったりもした。

そんなスーチンの肖像画をモディリアーニは三つ描いている。これはそのうちの最も早い時期(1915年)のものである。この絵の中のスーチンは、屈託のない表情をみせている。モディリアーニのモデルの中で、このような表情を見せているのは他にはない。二人が親密だったことを如実に物語っている。

だが、太くて明確な線やアーモンド形の眼などは、モディリアーニの他の作品と同じものである。

(1905年、キャンバスに油彩、38×28cm、シュトゥットガルト国立美術館)





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