壺齋散人の 美術批評
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赤ん坊を抱いて座る女:モディリアーニの肖像画




最晩年のモディリアーニは、生後1歳になった娘のジャンヌを、パリ郊外に住んでいるある夫人の手に託した。この絵は、その夫人が娘のジャンヌを抱いているところを描いたものである。

ズボロフスキーは、モディリアーニの死の直後に、モディリアーニの姉妹に宛てた手紙の中で、モディリアーノが死の三週間前に娘に会いに出かけ、非常に幸福な様子で帰ってきたと報告しているから、この絵はその際に描かれたものと思われる。モディリアーニは、自分の死が近いことをさとり、死ぬ前に娘の肖像を描いておきたいと思ったのではないか。

その思いに応えるかのように、乳母の膝の上に抱きかかえられた娘のジャンヌは、こちらを、つまり父親のモディリアーニの方を向いて顔を覗かせ、幸せそうな表情を見せている。ズボロフスキーがいうように、その日モディリアーニが非常に幸福な気分になったのは、娘の見せたこの表情のためだったのではないか。

この娘は、両親が死んだ後、父親の姉に引き取られ、成長した後では、父親の伝記を執筆する。

(1920年、キャンバスに油彩、130×81cm、ヴィルヌーヴ・ダスク、近現代美術館)





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