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クロード・モネ:印象派の開拓者


クロード・モネ(1840-1926)は美術史上、印象派の開拓者と位置付けられている。印象派は近代絵画の最初の波を代表するものであるから、モネは近代絵画の開拓者とも言える。近代絵画を切り開いた芸術家としては、エドゥアール・マネが第一に挙げられるが、モネはこの名前がよく似て、年もあまり違わない画家とともに、近代絵画の偉大な先駆者としての役割を果たした。

伝統的な絵画に対する近代絵画の特徴は、絵を三次元の世界の再現と見るのではなく、あくまでも二次元の平面的な世界ととらえる立場である。伝統的な絵画は、絵を三次元の世界の再現らしく見せかけるために、遠近法、肉付法、明暗法などを駆使し、対象をリアルに表現することにこだわったのだが、マネやモネを始めとした近代絵画の主導者は、こうした伝統的なやり方を捨てて、絵を二次元の平面として表現した。リアリズムではなく、別の全く創造された世界、そこに絵の生命があるとする立場である。

モネは、こうした立場を最も強く推し進めた。彼がとくにこだわったのは、光の表現である。光については、レンブラントなどのバロック派の画家たちもこだわりを見せたが、それは絵の三次元的な再現に光が寄与するという確信からだった。光をうまく活用することで、画面に明暗対比や立体的な表現効果がうまれ、それがリアルなイメージを生み出すと考えられていた。しかしモネは、光を純粋な光として描き、そこに立体感とか遠近を生み出す効果を期待しなかった。彼が期待したのは、光の偏在による画面の明るさであった。実際印象派の画家たちに共通するのは、この光の偏在に伴う画面の明るさだったのである。モネはそれを最初に意識的に追求した画家であった。

モネはマネよりわずか八歳年下で、絵画の活動の上でも、個人的な交際の面でも、深い付き合いがあった。マネはかならずしもモネの印象派に全面的に賛同したわけではなかったが、モネとその仲間の繰り広げる印象派の運動には深い理解を示したし、貧乏なモネに対して経済的な援助も行った。彼らの芸術上の共通点は、絵画についての伝統的な立場を乗り越えて、新しい表現を追求したという点にある。その結果、マネは彼独特の二次元的な表現世界を生み出し、モネは印象派と呼ばれるようになった、光を重視する画法を生み出した。

モネは二十代半ばから、偉大な画家としての片鱗を見せるなど、早熟な画家であり、八十六歳まで生きた長命な人物だったので、その長い活動期間にはいくつかの区切りが見られる。しかし光を重視するという姿勢は生涯を通じて変わっていない。そういう意味でモネは光の画家と言ってよい。

今日日本でモネといえば、一連の睡蓮の絵が思う浮かぶほど、日本人にはモネの睡蓮が有名であるが、彼の絵は無論睡蓮のような自然を描いたものにとどまらない。初期には人物を多く描いたし、また中期にも自分の家族を中心に多くの人物画を描いている。しかしモネの場合には、人物だけを強調したいわゆる肖像画はほとんどなく、ほぼすべてが風景に溶け合った人物を描いている。その点、彼は風景画家としてくくることができる面もある。

睡蓮を始めとした一連の自然・風景画は最晩年の作品だが、モネは晩年に到って、生きながら歴史上の巨匠としての名声を欲しいままにした。そういう点では非常に幸運な芸術家と言ってよい。

ここではそんなモネの代表作について、個々に鑑賞のうえ、コメントしたいと思う。なお、上の絵は、モネの自画像である。



草上の昼食:クロード・モネの出発点
カミーユ:クロード・モネ
庭の女たち(Femmes au Jardin):モネ
サン・タドレスのテラス(Terrace à Sainte-Adresse):モネ
水辺、ベンヌクール:モネ
ラ・グルヌイエール(La greneuillere):モネ
印象、日の出(Impression, soleil levant):モネ
アルジャントゥイユのひなげし(Les coquelicos a Argenteuil):モネ
キャプシーヌ大通り:モネ
昼食(Le déjeuner : panneau décoratif):モネ
読書する女(La liseuse):モネ
ラ・ジャポネーズ(La Japonaise):モネ
散歩(La Promenade):モネ
アパルトマンの片隅(Au coin d'apartement):モネ
サン・ラザール駅:モネ
モントルグイユ通り:モネ
死の床のカミーユ:モネ
ヴェトゥイユの画家の家:モネ
崖の上の散歩:モネ
日傘を持った女:モネ
ボートの娘たち:モネ
積みわら:モネの連作
ルーアン大聖堂:モネの連作
国会議事堂(Le parlement):モネ
睡蓮その一:モネ
睡蓮その二:モネ
睡蓮その三:モネ


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