壺齋散人の 美術批評
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水辺、ベンヌクール:モネ




1868年の春、モネはパリの百キロ以上西のセーヌ川添いの町ボニエール・シュル・セーヌ近くのベンヌクールに滞在し、そこでセーヌの水辺の光景を描いた。「水辺、ベンヌクール(Au bord de l'eau, Bennecourt)」と題するこの絵がそれである。この絵を通じてモネは、水の表現に夢中になった。やがてモネは、水の表現を完璧のものにして、晩年の一連の睡蓮の絵を描くわけだ。

セーヌ川を挟んで、手前には女性が水辺に憩い、対岸にはのどかな村が広がっている。そののどかな村の広がりを、水面が鏡のように映し出している。その村のありさまは、左手の大きな木の枝に隠されているが、その隠された部分を水面が映し出している。

その水面をモネは、鏡の表面のように平面的に描いている。水面が平面的であればあるほど、そこに写し出された形態は奥行きを獲得するのだ。

(1868年 カンバスに油彩 81.5×100.7㎝ シカゴ美術院)




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