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印象、日の出(Impression, soleil levant):モネ




官展に落選しつづけた若い印象派の画家たちが、モネを調整役として結社をつくり、自分たちだけの作品を展示する展覧会を開いた。1874年4月のことである。その結社は、「画家、彫刻家、版画家などによる共同会社」というそっけない名前だったが、ピサロ、ルノワール、シスレー、ベルト・モリゾなどが参加していた。彼らはキャプシーヌ大通りにある写真家ナダールのスタジオを展覧会の会場とし、合わせて165点の作品を持ち寄った。モネも5点の絵を出品した。「印象、日の出(Impression, soleil levant)」と題するこの絵は、そのうち最も注目を集めたものである。

注目を集めたと言っても、展覧会を訪れた客は、初日が175人、二日目がわずか54人という惨憺たるありさまだった。しかも客の多くは通りがかりに立ち寄った、冷やかしの人ばかりで、一般的な意味では、とても成功だったとは言えない。

この絵が注目を集めたのは、その題名のためである。題名に含まれている「印象」という言葉が、今後このグループの画風を代表する言葉として流通するようになったのである。オピニオン・ナショナル誌は、「これがもっぱら追及しているのは、外部から内部に与えられる『印象』の効果であって、内部から外部への『表現』の追求は輪郭線の愛好家にまかせている」と、皮肉交じりに紹介している。



なお、この絵はル・アーヴルの港の日の出を描いたものである。この部分は、その日の出の様子を拡大したもの、海面への光の反射がざっくりと表現されている。これが輪郭より印象を重んじたと受け取られたわけであろう。

(1873年 カンバスに油彩 48×63㎝ パリ、マルモタン美術館)




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