壺齋散人の 美術批評
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昼食(Le déjeuner : panneau décoratif):モネ




この絵は。アルジャントゥイユの家におけるモネ家族の生活の一端を描いたものである。手前のほうの、庭の一角にはテーブルが添えられ、食事した様子が伺われる。その様子から見て食事が終わったばかりなのだろう。息子のジャンは満腹して、積み木のような遊びをしているし、背後の庭の片隅では、妻のカミーユらしい女性がもうひとりの女性と歩いている。おそらく食後の腹ごなしなのだろう。

この絵を一見して感じるのは強烈な光だ。庭の一隅に落ちた日の光が、影になった部分との間に強いコントラストを生み出し、それが効果的に働いて、絵全体が光り輝くように見える。明暗対比はかならずしも意識的に強調されているわけではないにかかわらず、これだけ強いコントラストを感じさせるのは、光の部分があまりにも明るいからだ。その明るい光の中に、鮮やかな色彩の花が浮かび上がり、絵に強いハイライトをもたらしている。

絵全体の雰囲気としては、昼食後の充実した時間の、のんびりとした雰囲気が伝わって来る。その雰囲気を出すために、モネは小道具の描き方にも気をつかっている。たとえば、ベンチの上に無造作に置かれた日傘とか、木の枝にひっかけられた帽子とかである。

モネはこの絵を、1876年の第二回印象派展に、「装飾的なパネル」と題して出展した。

(1873年 カンバスに油彩 160×201㎝ パリ、オルセー美術館)




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