壺齋散人の 美術批評
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崖の上の散歩:モネ




モネは1881年にヴェトゥイユを去ってポワシーに移った。自分の息子たちのほか、アリス・オシュデとその娘たちを伴なって。モネとアリスは、もはや離れられない関係になっていたようだ。そのポワシーに滞在中、モネは家族を伴なってノルマンディーに創作旅行に出かけた。「崖の上の散歩(Le promenade sur la falaise, Pourville)」と題したこの絵は、その折のものだ。

海に突き出た断崖の端に二人の女性がたたずんでいる。傘をさしているのがアリスで、その手前のもう一人はアリスの娘だろう。遠い海上には多くのヨットが思い思いに浮かんでいる。

全体的な印象として、画面から風が吹き寄せてくるような感じがする。崖の上の草はその風にゆらめき、女性たちの衣装も風にひらめいている。モネは、実際に見た光景の感覚的な印象を、そのままこの絵に盛り込もうとしたのだろう。

この絵のなかの女性を見て観客は何を感じるだろうか。彼女たちに寄せるモネの暖かい愛情だろうか。それとも景色の一部として、周囲にとけこんだ無機的なフォルムだろうか。

(1882年 カンバスに油彩 66.5×82.3㎝ シカゴ美術院)




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