壺齋散人の 美術批評
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日傘を持った女:モネ




1883年、モネはオシュデの妻アリスとその子供たちとともにジヴェルニーに移り住んだ。ジヴェルニーはモネの最後に落ち着いた土地である。後年その土地に立派な家を建てたモネは、アリスと正式に結婚し、睡蓮の花を描きながら、幸福な晩年を送るようになる。

そのジヴェルニーで1886年に、モネは「日傘を持った女(Essai de figure en plein air)」の二つのヴァージョンを描いた。上の絵はその一枚だが、一見して1875年の作品「散歩」を想起させる。「散歩」は日傘をさしたカミーユと、その隣に息子のジャンを描いていたが、この絵では、アリスの娘シュザンヌ一人をフィーチャーしている。

モデルのポーズはほとんど「散歩」のカミーユと同じなのだが、カミーユの場合には顔の表情までわかるように描かれていたのに対して、この絵のモデルの顔は曖昧なままである。その理由ははっきりとはわからない。



これは、もう一枚の絵で、前の絵とは左右対称になっている。どちらの絵も、光を強く意識したものになっている。その太陽の光が日傘によって遮られ、衣装や草むらに陰影をつけている。その陰影によって、光の実在感を表現しようというわけである。

(1886年 カンバスに油彩 各131×88㎝ パリ、オルセー美術館)




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