壺齋散人の 美術批評
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桜草と羽根:ミュシャの世界




「桜草と羽根」をモチーフにした二枚一組の装飾パネル。それぞれのモチーフを擬人化して女性であらわし、彼女らが向かい合っている構図である。だが、互いに眼を伏せ、見つめあうことはない。モチーフ自体は、女性が手で持った形で表現されている。左側の女性は桜草を持ち、右側の女性は大きな羽根を持つといった具合だ。

上の絵は、左側の「桜草」。桜草は、女性の手に持たれるだけでなく、上部の枠のなかにもちりばめられている。円環の中の花の模様や女性の衣装を飾っている花は、桜草ではない。もっともこの作品は、完成当時は単に「花」と名付けられていた。後に「花」シリーズとの混同を避けるために「桜草」に変更されたいきさつがある。



これは右側の「羽根」。羽根は女性の手に持たれているほか、上部の枠のなかにもちりばめられている。円環の中の模様は幾何学的なパターンである。

このセットは、シルクサテンに刷られたバージョンもあり、三倍の値段にかかわらず、よく売れたという。

(1899年 基本は紙にリトグラフ 各71.0×27.3㎝)


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