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リューゲン島のスヴァントヴィト祭:ミュシャのスラヴ叙事詩2




ミュシャのスラヴ叙事詩シリーズの第二作。このシリーズは、チェコ人独自の歴史とスラヴ人共通の歴史を半々に取り上げているが、この作品はスラヴ人全体に共通する歴史がテーマ。リューゲン島はバルト海に浮かぶ島で、そこにスラヴ人が、民族の神スヴァントヴィトの祭壇を設けた。この絵は、その神のための祭に集まったスラヴ人たちをテーマにしている。

大勢のスラヴ人たちが、祭を祝うために集まっている。かれらの頭上には、巨大な樫の木を背にして、スヴァントヴィト神が君臨し、その周りを神々と英雄たちが取り囲んでいる。画面の左上には、ゲルマンの神々が描かれ、これからスラヴとゲルマンの神同士の戦いが始まることを予感させる。

この島は白亜の断崖で有名だが、その断崖が画面左手に描かれている。その断崖の前に集合したスラヴ人たちは、神々同士の戦いが始まるという意外ななりゆきに不安を覚えているようだ。



これは画面最前景にいる母子。母の表情には、深い不安が読み取れる。

(1912年 カンバスにテンペラ 610×810㎝ ヴェルトゥジニー宮殿)


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