壺齋散人の 美術批評
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スラヴ式典礼の導入:スラヴ叙事詩



(スラヴ式典礼の導入)

「スラヴ式典礼の導入」は、モラヴィア(チェコ)におけるキリスト教の典礼がスラヴ式でおこなわれることを記念した作品。9世紀から10世紀にかけて、モラヴィアではキリスト教が普及したが、聖書や典礼は民族自前ではなかった。そこでモラヴィア大公ロスティラフは、神学者のキュリロスに命じて、青書のスラヴ訳を作らせる一方、スラヴ式典礼の導入をすすめた。

この作品は、そのスラヴ式典礼の様子を描いたもの。画面右手下部には、モラヴィア大公が東ローマ帝国の勅使によってスラヴ式の典礼を受ける様子が描かれ、画面上部には、それを祝福する聖人たちが描かれている。画面手前の青年が右手に持っている輪は、スラヴ民族の統一を象徴しているという。

(1912年 カンバスにテンペラ 610×810㎝ プラハ、ヴェルトゥルジニー宮殿)


(ブルガリアの皇帝シメオン)

皇帝シメオンはスラヴ民族中興の祖として知られる。9世紀の末から10世紀の初めにかけて、バルカン半島全体をカバーする大帝国を築き上げ、東ローマ帝国をしのぐほどの繫栄を誇ったという。

シメオンは政治家であるとともに高僧であり、また文化の守護者でもあった。この絵は、かれの宮廷に集まったさまざまな文化人を描いている。瞑想にふける者、本を広げる者、美術らしい活動に従事する者ら、みな思い思いのことをしている。シメオン自身は、哲学者らしき者を相手に、何か議論をしているように見える。

なおこの作品は、前の三作よりずっと後の1926年に完成している。作品の並べ方は、制作時期の順序とは一致しない。

(1926年 カンバスにテンペラ 405×480㎝ プラハ、ヴェルトゥルジニー宮殿)


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