壺齋散人の 美術批評 |
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赤いアメリカ蔦の家:ムンクの不安 |
「赤いアメリカ蔦の家」と題したこの絵も、ムンクとトゥラのとの不安定な関係を描いたのだと思われる。赤いアメリカ蔦の家は、ムンクとトゥラの愛の巣のはずなのだが、ムンクはそこから逃げ出そうとしているのだ。 家にまとわりついたアメリカ蔦の強烈な赤と、手前の男の青ざめた顔が対照的だ。赤い蔦は、男女の情熱的な愛と、二人の間の強烈な諍いを象徴している。男はそこから両義的な感情にさいなまれながら逃げ出してきた。この男こそムンク自身なのだろう。 赤い蔦を除けば、みな寒々とした光景が広がっている。木は葉を落とした枝が貧相に伸びているし、男が逃げてきた道はどろんこ道だ。白い柵も、それだけが見捨てられたように見え、なにかを取り囲んで守っているようには見えない。 これは、男の表情の部分を拡大したもの。青ざめた顔の中に赤い目がある。髭も赤く塗られている。髭はともかく、目まで赤く塗ったのは、男の心の動きを表現したかったためだろう。動転して心が沸き立っているのを、赤い目で、つまり充血した目で現わしているわけだ。いかにもムンクらしい表現の仕方だ。 (1899年頃 カンヴァスに油彩 119.5×121cm オスロ ムンク美術館) |
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