壺齋散人の 美術批評 |
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桟橋の少女たち:ムンク |
「桟橋の少女たち」と題するこの絵は、不思議な空間感覚をもたらす。桟橋の描き方が、遠近法に基づいているように見えながら、消失点のところにある桟橋の先端が曖昧なかたちで背景の中に埋没しているために、空間がゆがんでいるような印象をもたらすのだ。家の周りの柵の描き方も、周囲との間に不調和な印象を与える。 水面に見入っている三人の少女たちは、ムンクの登場人物としては、おとなしい印象を与える。少なくとも不安とか激情とかいったものは感じさせない。どちらかというと穏やかな印象だ。 少女たちが穏やかにみえる分、背景との不調和が異様な感じを与える。特に空の描き方などは、どちらかというと暗鬱な感じを醸しだしているので、画面全体を分裂させるような働きをしている。左手のもっこり茂った樹木が、構図上少女との間のバランスをなんとか保っているようだ。(1901年ごろ カンヴァスに油彩 136×125.5cm オスロ国立美術館) これは、数年後に描かれた同一モチーフのヴァージョン。少女が四人に増え、そのうち手前の二人はこちら側を向いている。そのほかの構図はほぼ同じだが、画面全体が暗い色調に変わっている。左手に沈みつつある太陽が描かれているから、おそらく夕方の光景なのだろう。(1905年 カンヴァスに油彩 128×152cm オスロ ムンク美術館) |
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