壺齋散人の 美術批評 |
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フローラに扮したサスキア:レンブラント |
新婚当時のレンブラントは、新妻サスキアの肖像画を多く描いた。サスキアのほうも我慢強く夫の仕事に付き合った。もっともその仕事は、金のためというより、とりあえずは二人の結婚記念といった性格が強かったようだ。「フローラに扮したサスキア」と呼ばれるこの絵は、そんな一点。春の女神フローラに扮したサスキアをモデルにしている。 サスキアは、フローラらしく、花飾りの冠をかぶり、花で飾った笏を右手に持っている。左手は胸のあたりで衣装に軽く添えられている。どこかあらぬ方角を見ているサスキアの表情には、新婚の満足感が溢れているようである。 レンブラントが妻をフローラに扮させているのを見た友人たちは、ローマではフローラは娼婦を意味すると忠告したのだったが、レンブラントは気にしなかった。花のみずみずしいイメージのほうが大事に思えたからだ。花飾りをよく見ると、チューリップが耳元に垂れ下がっている。チューリップはあくまでオランダの花である。レンブラントはサスキアを、オランダの花の女神に見立てたわけだ。 そのサスキアに光線があたり、それが画面に強い陰影をもたらしている。その印影のおかげで、サスキアは浮かび上がって見える。 (1634年 カンバスに油彩 125×101㎝ サンクト・ペテルブルグ、エルミタージュ美術館) |
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