壺齋散人の 美術批評
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酒場の放蕩息子レンブラントとサスキア:レンブラント




レンブラントは、自分自身の自画像と妻サスキアの肖像画を熱心に描いたのだが、二人そろってポーズをとっている絵は、この作品くらいだろう。レンブラントは、放蕩息子を気取って酒場で気勢を上げ、妻のサスキアはそれを鷹揚に見守っているというような構図だ。

この作品にはユニークな解説がつきものだ。レンブラントは、妻のサスキアの持参金を浪費しているとの噂を立てられていたのだが、この作品はそうした噂へのレンブラントの回答だというのだ。その回答はまじめなものではない。レンブラントは、自ら放蕩息子に扮することによって、浪費の噂に対して開き直っているように見える。その浪費を妻のサスキアも承知しているというメッセージを、この作品に込めたのだという。

レンブラントは右手でワイングラスを捧げ上げ、左手でサスキアの腰のあたりを撫でている。しかしエロチックな雰囲気は伝わってこない。あくまでもレンブラントの陽気さに焦点が当たっている感じだ。こうした放蕩息子のイメージは、聖書から来ており、ボスはじめフランドルの画家が好んだモチーフだった。

これは二人の姿の部分を拡大したもの。レンブラントは派手な衣装を身に着けてやにさがった表情をしており、サスキアのほうはあきれたといふうに微笑をたたえている。その目つきはしかし、しっかりものの目つきだ。

(1636年 カンバスに油彩161×131㎝ ドレスデン、国立絵画館)




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