壺齋散人の 美術批評
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目をえぐられるサムソン:レンブラント




「目をえぐられるサムソン」も劇的な一瞬をとらえた作品。サムソンは旧約聖書の士師記に出て来るユダヤ人の英雄で、ユダヤ人を苦しめていたペリシテ人を相手に、たびかさなる武勇を示したが、それは神の力添えの賜物だった。ところがある時一時的に神の加護が無くなったところをペリシテ人に襲われ、両目をえぐられてしまう。この絵は、その場のシーンを再現したものだ。

数人のペリシテ人たちがサムソンに襲い掛かり、そのうちの一人が短剣をサムソンの目に突き刺す。サムソンの目からは血がほとばしる。そのサムソンを背後から羽交い絞めにする男や、サムソンに槍を向ける男、またサムソンの腕に手錠をはめる男などが写実的に描かれている。その現場は洞窟の中に設定され、外から入りこむ光線によって、人物の群像が浮かび上がるように工夫されている。



これは目をえぐられるサムソンの表情を拡大したもの。短剣がサムソンの右目に突き刺さり、そこから血がほとばしり出ている。まさに泉のような躍動感を感じさせる。聖書にはサムソンは両眼をえぐられたとあるので、左の方の目も追ってえぐられるわけだ。

なおサムソンは、後日神の加護が復活し、再び力を取り戻す。その力を発揮して、監獄の建物を崩壊させ、大勢のペリシテ人を殺したとされている。

(1636年 カンバスに油彩 206×272㎝ フランクフルト、シュテーデル美術院)




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