壺齋散人の 美術批評
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水浴するスザンナと二人の老人:レンブラント




水浴するスザンナをめぐる逸話は聖書外典「ダニエル書」に出て来る。スザンナは名士ヨアキムの妻だったが、その美しさにユダヤの裁判官の長老二人が横恋慕し、強姦しようとする話である。これをレンブラントは視覚的イメージとして描いた。師のラストマンがチョークで描いたデッサンを参考にしたというが、構図を大胆に変えてある。ラスマトンのデッサンは、腰かけるスザンナと、背後から彼女に話しかける老人たちが描かれているが、この絵では、老人の一人がスザンナに襲い掛かり、スザンナは怯えた表情を見せている。

非常に暗い背景から、人物が浮かび上がるように描かれている。とくにスザンナは明るく描かれているせいで、強く浮かび上がり、見る者の視線を強く引きつける。二人の老人のうちのひとりが、スザンナの背後から襲い掛かり、もう一人はやや離れたところからその様子を見つめている。輪姦するつもりなのだろう。



これはスザンナの部分を拡大したもの。スザンナは衣を剥ぎ取られそうになり、恐怖のあまり顔はこわばっている。どこか一点を見つめているが、老人たちのほうではない。第三者に訴えかけているように見える。あるいはこの絵を見る人に向って訴えているのかもしれない。

モデルの顔をよく見ると、ヘールヘトの後でレンブラントの愛人となったヘンドリッキエとよく似ている。レンブラントがヘールヘトと別れたのは1648年で、その後ヘンドリッキエが愛人として現れたことになっているが、この絵が描かれたのは1647年で、果たしてその時点でヘンドリッキエがモデルになった可能性があるのか、はっきりしたことはわからない。

(1647年 板に油彩 76.6×92.7㎝ ベルリン、国立絵画館)




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