壺齋散人の 美術批評
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川で水遊びする女:レンブラント




「川で水遊びする女」と呼ばれるこの絵は、水浴するスザンナのモチーフを援用したものだとか、あるいはパテシバだとかとの説があるが、そんなことを抜きにして、一人の無邪気そうな女性を描いたものと受け取ってみても、なかなかの味わい深さを感じさせる一点。レンブラントの女性像のなかでも、もっとも魅力的なものだ。

一人の女性が、衣の裾をたくし上げて川の中を歩いている。水面にそそがれた目が、女性の慎重さを物語っている。女性の背後にあるものは何か。衣装のようにも見えるが、それが水上にあるとはおかしなことだ。また、女性の手の描き方がぞんざいさを感じさせる。そんなことからこの絵は、未完成なのではないかとも言われたが、それにしては完成の印である署名がある。

女性のモデルはヘンドリッキエ。この時の彼女はまだ三十歳になっていなかったから、まだ若さを感じさせる。だが官能的な雰囲気は伝わってこない。

(1655年 板に油彩 61.8×47.0㎝ ロンドン、ナショナル・ギャラリー)





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