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家族の肖像:レンブラント




レンブラントは1693年の10月に63歳で死んだ。その年に描いた作品の一つと思われるものに「家族の肖像」がある。この作品は当時のレンブラントの心の風景を映し出していると考えられる。というのもレンブラントは、その前年に最愛の息子ティトゥスを失い、この年の三月にはティトゥスの遺児ティティアが生まれていた。順調なら、息子の家族を暖かい目で見守ってやれたものを、という無念の気持が、この絵からは読み取れるのである。

画面には睦みあう家族が描かれている。夫婦と三人の子どもたち。よく見ると、父親にはレンブラントの面影が見られるし、母親の顔は、「ユダヤの花嫁」のリベカとよく似ている。リベカはティトゥスの妻マグダレーナと考えられるから、これはあるべきはずだった息子の家族を理想的に描いたものと思われるのである。

背景を思い切って単純化し、その暗い背景から人物が効果的に浮かび上がって見える。人物の衣装はかなり凝った描き方を施されているが、背景が単純であるだけに、一層効果を高めている。また人物の前後関係にも配慮が為されている。たとえば、父親の衣装を思い切り暗くすることなどだ。

(1669年 カンバスに油彩 126×167㎝ ブラウンシュヴァイク、ヘルツォーク・アントン・ウルリッヒ美術館)





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