壺齋散人の 美術批評
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浴女:ルノワールの世界




1888年からルノワールの長い晩年が始まる。晩年のルノワールは、アングルを通して確立したはっきりした輪郭に、豊かな色彩、それも燃えるような色彩を重ねるという、今日ルノワールの作風を特徴づけると思われているものを表現するようになった。ルノワールはその表現スタイルを用いて、多くの裸婦像を描いたのである。

「浴女(Baigneuse)」と題した1888年制作のこの絵を、前年の大作「浴女たち」と比較すると興味深いことが浮かび上がって来る。構図的には、アングル風に輪郭をはっきりさせて、自然をバックに豊穣たる浴女の裸体を描いているのだが、色彩の使い方には相違が認められる。「浴女たち」は、アングルを意識して光沢を表現していたが、この絵の場合、色彩そのものの美しさをそのまま表現している。また、「浴女たち」にはほとんど陰影というものがなかったが、この絵は、陰影を強調してメリハリをつけている。

この頃のルノワールは、パリを離れて、田舎でキャンバスを立てることが多かった。この作品もそうした一枚なのだろう。

(1888年 カンバスに油彩 65×54㎝ 個人コレクション)




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