壺齋散人の 美術批評
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草束を持つ少女:ルノワールの世界




「草束を持つ少女(Petite fille à la gerbe)」と題した1888年のこの作品も、ルノワールの晩年の最初を飾るものだ。田園地帯の中で、刈り取った草の束を抱える幼い少女を描いたこの絵は、あふれるような色彩感を売り物にしている。

輪郭は、線によってではなく、明暗対比によって丁寧に表現されている。首のまわりの髪の毛の色を思い切り暗くしたり、腕のまわりを黒っぽく表現する一方、髪の毛のオレンジ色に補色のグリーンを対比させるやり方だ。

モチーフである少女は、暖色で決めている。リボンの色は赤だし、上着の模様も暖かい色で施してある。一方背景の方は、田園らしく、グリーンを基調にした寒色である。黄色も、寒色系のレモン系統の色を選んでいる。

モデルの少女は、妻の実家があるエッソワに住んでいる普通の少女なのだろう。丸顔にまん丸い目が幼さを感じさせる。

(1888年 カンバスに油彩 61.8×54㎝ ブラジル、サンパウロ美術館)




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