壺齋散人の美術批評
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田園の楽しみ:ヴァトーのロココ世界




「田園の楽しみ(Fête galante)」と題されたこの作品は、田園にピクニックに出かけた若い男女たちを描いたもの。多くのカップルたちが、森の中の空地に腰掛け、思い思いにくつろいでいる様子を描く。「シテールへの船出」とはまた異なった趣の田園趣味を表現した作品である。

画面右前面では、五人の男女が会話を楽しみ、その左手には、二人の少女が犬と戯れている。犬は女性のコケットリーの小道具として扱われることが多いが、このように、少女の遊び友達にもなるのだ。後景には、数組の男女が、やはり思い思いにくつろぐさまが描かれている。

右手上に、全体の様子を眺め下ろすかのように、女性の裸体の石像が描かれているが、これがヴィーナスであることは十分にありうる。ヴィーナスは、ルネサンス美術におけるもっとも人気のあるキャラクターだったが、典雅を重んじるロココ美術でも、ひきつづき重要なモチーフとされた

(1719年頃 カンバスに油彩 125×188㎝ ロンドン、ウォーレス・コレクション)



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