壺齋散人の美術批評
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ジェルサンの看板:ヴァトーのロココ世界




アントワーヌ・ヴァトーの作品「ジェルサンの看板(Enseigne de Gersaint)」は、彼の晩年の傑作であり、「シテールへの船出」と並んでフランスロココ美術の頂点をなすものとの評価が高い。

ジェルサンとは、当時ヴァトーが世話になっていた画商である。ヴァトーは、1720年にロンドンに旅行した後、疲れた身体をジェルサンの家で休めた。この絵はジェルサンのもとに滞在していた時期に、わずか一週間で描き上げたとされる。ヴァトーの速筆を物語る逸話である。

ジェルサンの店の内部を正面からとらえている。石を敷きつめた歩道から一歩あがった床の上に、数人の群像が描かれている。着飾った女たちは客で、それを店員たちがもてなしているのであろう。左端には、キャンバスを箱に入れようとするさまが描かれているが、それはルイ十四世の肖像だという。ルイ十四世は、ロココ美術のパトロンである。

店内部の壁には、厖大な量の絵画作品がかけられている。それらを含めて、背景の色彩は銀灰色に塗りつぶされ、それとの対比で、前景の女性たちの派手な衣装が引き立って見える。

(1720年 カンバスに油彩 162.0×307.8㎝ ベルリン、シャルロッテンベルグ宮殿)



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