壺齋散人の美術批評
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パリスの審判:ヴァトーのロココ世界




パリスの審判はギリシャ神話に取材したモチーフで、ルネサンス以降多くの画家が描いてきた。有名なものとしては、クラナッハとルーベンスのものがある。両者とも、ヴィーナス、ミネルヴァ、ジュノーの三人を並べて描いている。それに対してヴァトーのこの作品は、ヴィーナスに焦点が当てられ、ほかの二人の女神はわき役に撤している。

そのヴィーナスは、画面の大部分を占める後姿で表現されている。豊満で肉感的な臀部に象徴されるヴィーナスのエロチックな美が主題である。そのヴィーナスの顔は、つくしんぼの頭ほどの小ささであり、そのためヴィーナスのプロポーションは十頭身以上にデフォルメされている。しかもその長い胴体の少なからぬ部分が豊満な臀部によって占められているのである。

画面左手で、ヴィーナスに褒美のりんごを差し出しているのがパリス、その背後にいるのはメルキュール、右手で楯を持っているのはミネルヴァ、その楯に映っているのはヴィーマスのはずだが、なぜか悪女のような表情をしている。ミネルヴァの背後にいて、こちらに振り向いているのはジュノーである。

ヴァトーの神話的な作品の代表的なものである。

(1721年 カンバスに油彩 47×31㎝ パリ、ルーヴル美術館)



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