壺齋散人の美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板


ヴィーナスの化粧:ブーシェのロココ世界




「ヴィーナスの化粧(La Toilette de Vénus)」は、かつてポンパドゥール夫人の浴室兼化粧室の壁を飾っていた。「水浴のディアナ」もその部屋に一緒に飾られてあったという。この絵は、三人のキューピッドを従えたヴィーナスをモチーフにしている。ヴィーナスは、ブーシェ得意のモチーフで、繰り返し手がけている。

キューピッドたちは、ビーナスの髪を繕ったり、化粧道具のようなものを差し出したり、あるいは自分の遊びに夢中になったりしている。これらのキューピッドがいなければ、ブーシェ本来の豊満な女性美を感じさせるだけであろう。

ヴィーナスは胸に白鳩のようなものを抱いているが、その存在を気にかけている様子はない。あくまで自分自身の美しさに耽溺しているといった風情だ。

背景には、重厚なカーテンごしに、庭園の光景が見える。その様子は、暗い色調であっさりと表現され、モチーフが浮かび上がって見えるように工夫されている。

(1751年 カンバスに油彩 107×84㎝ ニューヨーク、メトロポリタン美術館)



HOME ロココ美術次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである