壺齋散人の美術批評
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トランプの城:シャルダンの風俗画




「トランプの城(Le château de cartes)」と題されたこの作品も、シャルダンの風俗画の傑作。ほとんど同じ構図の絵が複数残っている。中には向きが逆で、モデルが女性のものもある。この構図にシャルダンがこだわった理由はよくわからない。

構図や陰影処理にフランドル絵画の影響が指摘されるのは、「手紙に封をする婦人」と同じである。この絵の場合、光源を画面左上に設定し、そのから来る光に応じて陰影処理を行っている。陰影のコントラストはバロック絵画におけるような劇的なものではなく、いささかやわらかい印象を画面に与えている。

背景は全くの無地であり、しかも地味な色合いで塗りつぶされている。そこから、この絵が、風俗画を超えて肖像画に近い雰囲気をもたらしている。シャルダンは、肖像画も得意であった。

(1737年頃 カンバスに油彩 77×68㎝ パリ、ルーヴル美術館)



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