壺齋散人の美術批評
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食前の祈り:シャルダンの風俗画




「食膳の祈り(Bénédicité)」と題されたこの作品は、シャルダンの風俗画の最高傑作と言うべきもの。シャルダンは、1740年に国王ルイ15世に謁見した際、これを献上品として持参した。この図柄そのものは、複数制作されており、その一部はすでに世間の評判になっていた。そこでシャルダンはその図柄で新しいものを制作し、国王に献上したと考えられている。

庶民の生活の一部をスナップショット的に切り取った構図は、当時のフランスにはなかったもの。シャルダンはこうした風俗画の構図を、フランドル絵画から学んだようだが、シャルダン特有の工夫もみられる。それを一言でいえば、カトリック的な敬虔さというべきか。この作品は、単なる風俗画を超えて、宗教的な雰囲気を漂わせている。後代のミレーの絵に通じるものがある。

全体的に暗い色調の中で人物だけは明るく描かれ、そのことによって、画面から浮かび上がって見える。バロックの技法の影響であろう。

(1740年 カンバスに油彩 49.5×39.5㎝ サンクト・ペテルブルグ エルミタージュ美術館)



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