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フラゴナール:ロココ美術最後の巨匠




フラゴナール(Jean Honoré Fragonard 1732-1806)は、ロココ美術最後の巨匠である。ロココ美術最大の特徴である優雅で絢爛で神話的なモチーフを描き、時代の好みに応えた。彼の全盛期は、ルイ16世の治世時代と重なっている。そのルイ十六世が体現していた時代の精神を美術の世界で表現したのがフラゴナールであった。そんなわけでフランス革命がおこり、ルイ十六世が首をちょん切られると、フラゴナールの時代も終わった。かれは最晩年に、アカデミーの幹部としての資格で、ルーヴル宮殿に住むことを許されたが、1805年にそこを追い出され、翌年に死んだ。

南仏のカンヌ近郊の町グラースに生まれた。実家は皮手袋の製造をしていた。絵心があったので、一家が1738年にパリに出ると、シャルダンとブーシェにそれぞれ短期間習っている。その後、王立学校で歴史画を学び、1756年から5年間イタリアで美術修行を行った。

かれの出世作は、「コレシュスとカリロエ」と題した歴史画風の作品。かれはこれを1765年のサロンに出展。そこで認められて、アカデミー会員になることができた。アカデミーはフランス美術の総本山だったので、その会員になることは、画家として頂点を極めることであった。

「 コレシュスとカリロエ(Le grand prêtre Corésus se sacrifie pour sauver Callirhoé)」は、パウサニアスの戯曲。ギリシャ神話に取材した作品だ。恋人への愛のために自分の身を犠牲にする話である。画面はその犠牲の現場を描いているはずだが、神話そのものとの関連は今一つ伝わってこない。

なお、フラゴナールといえば香水のブランドになっている。かれの生れたグラースは香水の産地だったこともあり、子孫がその利を生かして香水製造に乗り出したということらしい。パリのオペラ座の近所にある店に小生も行ったことがある。

(1765年 カンバスに油彩 353×445㎝ パリ、ルーヴル美術館)



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