壺齋散人の美術批評
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ぶらんこ:フラゴナールの代表作




「ぶらんこ(Les Hasards heureux de l'escarpolette)」と題されたこの作品は、フラゴナールの代表作であり、かれの最高傑作との呼び声も高い。これは、サン・ジュリアン男爵の依頼を受けて制作したものだが、たちまち評判を呼び、版画に印刷されて出まわったほどだ。

見ようによっては、典雅とも言えるし、逆に猥褻ともいえる。ぶらんこに乗っている若い女性は、中年男とともに楽しんでいるのであるが、その中年男は、地面に坐して下から女の躰の奥を覗く位置にある。それをみたキューピッドが、人差し指で唇を抑えているのは、この猥褻な眺めへの抗議のように受取れる。この絵が大評判になったのは、そうした猥褻さのためかもしれない。

女の背後では、年老いた使用人が、ロープを使ってぶらんこを揺らしている。その手前には二人のキューピッドがいて、やはり猥褻な眺めにショックをうけているようである。

構図的には、モチーフが画面下方に偏っているところがミソである。女の位置をもっと上にすると、観客まで猥褻さの片棒をかつぐことになりなねない。

(1767年頃 カンバスに油彩 81.0×64.2㎝ ロンドン、ウォレス・コレクション)



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