壺齋散人の 美術批評 |
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ピエロ:ルオーの世界 |
今日いわゆる「ルオー的な」絵として知られる絵をルオーが描くようになるのは、1920年代の半ば頃である。上の絵は、1925年に描かれたものだが、これなどは、いかにもルオーらしい。この一年前に描いたサーカスの道化の絵と比べて、相違は一目瞭然である。だから筆者は、この絵をもってルオー的な様式を確立したものだとし、また1925年をルオーにとっての決定的な転換の年だとしたい。 この絵は、サーカスの道化をモチーフにしているにかかわらず、まるでキリスト教の殉教者のような雰囲気を漂わせている。いわゆるルオーらしさというのは、そうした宗教的な雰囲気を感じさせるところにある。ルオーはそうした雰囲気を、徒弟時代に学んだステンドグラスの世界から吸収したようだ。 ステンドグラスの最大の特徴は、単純なフォルムと鮮やかな色彩を通じて、宗教的な感情を表現するところにある。この絵にもその特徴を見て取ることができる。フォルムは極度に単純化され、色彩も鮮やかだ。しかも、モチーフを暗い背景から浮かび上がらせることで、画面に劇的な効果を演出している。宗教的な内面が劇的な形をとることは非常に珍しいのであるが、ルオーの場合にはその二つが矛盾なく共存している。 長くて大きな鼻と、おちょぼぐちのように小さな口との組み合わせは、初期から晩年にいたるまで、ルオーの世界の登場人物に共通する特徴だ。 (厚紙に油彩 75.5×51.5㎝ 日本、ブリジストン美術館) |
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