壺齋散人の 美術批評 |
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小さい家族:ルオーの世界 |
ルオーは生涯を通じてサーカスにモチーフをとった作品を多く描いた。1903年ごろから描き始めたそれらの絵は、当初は道化などの人物をアップにしたものが多かったが、1930年代に入ると、複数の人物を主題にして、複雑な構図の絵が増えるようになる。1932年に描かれた上の絵は、そうした新しい傾向を感じさせるものである。 小さい家族」と題したこの絵は、道化の夫婦とその子供の三人家族を描いたものだ。子供を真ん中にして、父親と母親がくつろいでいる。彼らがいるのは、おそらくサーカスの小さなテントの中だろう。テントの中とは言え、一応暖かい家庭の雰囲気を感じさせる。 サーカス一座の家族を描いたものとしては、ピカソの絵が思い浮かぶ。ピカソの絵の中のサーカスの家族は、なんとなく旅芸人の悲哀のようなものを感じさせるが、この絵の中の道化の家族には、暖かい雰囲気が感じられる。 ルオーは、人物の一人ひとりを強調するために、それなりの工夫をしている。頭の背後をわざと暗く塗りつぶしたり、白を有効に使ったりといった具合だ。暖色が多く用いられているが、そのことによって、絵の雰囲気がいっそう穏やかなものとなっている。 (カンヴァスに油彩 208×116㎝ パリ、個人コレクション) |
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