壺齋散人の 美術批評 |
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傷ついた道化師:ルオーの世界 |
「傷ついた道化師」と題するこの絵は、「小さな家族」と同じく1932年に描かれた。この絵にも、親子らしい三人の道化が出てくる。真ん中にいる母親らしいものが、傷ついたのだろう。それを夫らしい右側の男と、子どもらしい左側の少年が気遣っている。 男は女をやさしくいたわり、子供はそれを不安そうな表情で見守っている。女はおそらく大きなけがをしたのだろう。歩いているところからそうではないと言えなくもないが、絵の雰囲気からすれば、大きなけがをしたと思いたくなる。そのけがは、サーカスの演技、たとえばアクロバットに失敗したせいかもしれない。 そんなふうに、見る者をして想像せしむるところがこの絵にはある。そのように想像させるのが、ルオーがこの絵にこめた意図だったのかもしれない。ルオーには、絵を通じてなにかを人に訴えかけるようなところもある。 三人の道化たちを、額のなかに収めることで、これは絵画としてあなたに訴えかけているのだ、と主張しているように伝わってくる。 (カンヴァスに油彩 200×120㎝ パリ、個人コレクション) |
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