壺齋散人の 美術批評
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聖顔:ルオーの世界





ルオーは1912年以降、キリストの顔、聖顔を繰り返し描き続けた。その大部分は、文字通りキリストの顔をアップで映し出すように描いたものだ。顔だけで、首から下のないものである。その顔は、長く伸びた鼻、大きく見開いた目、おちょぼぐちのように小さな口という特徴をもっている。その顔を画面の中心にどっかりと据え、その周辺を比較的単純なパターンのようなものでかたどっている。

これは、1933年の作品。画面の中心にキリストの顔を描き、その周辺を額縁のようなもので区切っている。ルオーは、人物像を額縁で囲うのが好きだったようで、ほかにも同じような構図の絵を多く描いている。

キリストの顔は、たいていは穏やかに描かれるものだが、この絵の中のキリストは、大きく目を見開いて、口もすこし開きぎみなことから、何かを語りかけているとも、あるいは心に動揺を抱えているとも読み取れる。いずれにしても、穏やかは表情ではない。

キリストの顔の周囲に、黄色いパターンのようなものが施されているが、これは文字ではなく、波型の線の連続のように見える。これでルオーが何を表現しようとしたのか、意図は明らかではない。

(カンヴァスに油彩 91×65㎝ パリ、国立近代美術館)





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