壺齋散人の 美術批評 |
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キリストの顔(Tête de Christ):ルオーの宗教画 |
ルオーは、キリストの顔をアップで描いた絵がおびただしい数に上る。その大部分は、首から下のない頭部だけを描いたもので、文字どおりキリストの顔と呼べるものである。ルオーはまたそのほかに、首から下を入れた、半身像のような絵をたくさん描いた。この作品は、その代表的なものである。 副題に「受難(Passion)」とあることから、おそらくピラトによる裁きを受ける前後のキリストがモチーフになっているのだろう。キリストは、顔をやや下向きにし、斜め前方を見ているが、その表情には生き生きとした気分が感じられず、むしろ憂愁に沈んでいるようである。 受難がモチーフなのだから、このように憂鬱そうな表情になるのは当然のことのように思えるが、それにしてはどこか思い詰めたようなところも感じられる。受難のキリストは、まず裁判にかけられ、そこで散々侮辱されたうえで、十字架にかけられるべくゴルゴタの丘へと連行される。この絵の中のキリストは、裁判を受けているところを描いたものだろうと思われる。その裁判で、大勢のユダヤ人から侮辱されて、茫然とするキリストを、ルオーは描いたのだろう。 背景を寒色系で混色し、キリストの肉体を暖かい色で塗ることで、背景から浮かび上がらせている。大きな瞳を黒く塗りつぶすのは、この時期のルオーの特徴である。左側に赤く塗られているものが何か、よくわからない。背景にポイントを添える工夫だろうと思う。 (1937年 カンヴァスに油彩 105×75㎝ クリーヴランド美術館) |
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