壺齋散人の 美術批評 |
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エジプトへの逃避(La fuite en Egypte):ルオーの宗教画 |
「エジプトへの逃避(La fuite en Egypte)」と題するこの絵も、聖書に取材したものだ。福音書によれば、キリストの誕生を祝った東方の三博士が国へ帰ったあと、主の使いがヨセフの夢に現れて、生まれた子と母親を連れてエジプトへ逃れよと言った。ヘロデ王が、その子を殺そうとしているからというのだ。そこでヨセフは、夜の間に嬰児とその母親とを連れてエジプトへ逃れた、という話である。 絵は、母子を乗せた馬と、それを引いてゆくヨセフを描く。中段にいる三人の人物は、東方の三博士だと思われる。彼らは、自分たちの言動によってイエスに災いが及んだことを後悔しているようであるが、絵からはその表情はうかがえない。彼らばかりか、母子とヨセフの表情もうかがえない。ルオーは、人物たちを象徴的に描くことで、宗教的な雰囲気を演出しようとしたのかもしれない。 背景となっている町は、おそらくユダヤの町なのだろう。町の向こう側には、海あるいは湖が見え、その上に赤い月がかかっている。 全体に青を基調として、それに暖色を配置し、画面の色彩バランスをとっていることは、他の作品と共通している。この絵の場合には、色彩のバラエティがより多彩になったとの印象を受ける。その中で、白の使いたかが印象的である。 (1945年ころ カンヴァスに油彩 61×47㎝ パリ 個人コレクション) |
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