壺齋散人の 美術批評 |
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深き淵より(De Profundis):ルオーの宗教画 |
「深き淵より(De Profundis)」と題するこの絵は、聖書の詩編130に取材している。この詩は、次のような言葉で始まる。「De profundis clamavi ad te, Domine:Domine, exaudi vocem meam. Fiant aures tuae intendentes in vocem deprecationis meae. (深い淵から、主よ、あなたに叫びます。主よ、私の声を聞き入れてください。あなたの耳を傾けてください、嘆き祈る私の声に)」 この詩自体は旧約聖書におさめられたものであり、キリストとは直接の関係はないはずだが、ルオーは絵の中に十字架を画き入れることで、この詩をキリストと結びつけた。それゆえ、絵の中の母子が祈っているのは、エホバに向かってではなく、キリストに向かってであると解釈できる。 かつてボードレールは、この詩を通じて女に呼びかけたのであったが、ルオーはキリストに呼びかけたかったのであろう。そうだとすれば、絵の中の母子はルオーの分身だということになり、横たわっている男こそがキリストだということになる。 絵解きはこれくらいにして、絵自体を見つめてみよう。この絵も、ルオー特有のブルーを基調にして、精神的な世界を演出しているといってよい。赤や白の使い方は、この絵でも効果的だ。 (1946年 カンヴァスに油彩 65.5×51.0㎝ パリ、国立近代美術館) |
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