壺齋散人の 美術批評 |
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優しいベルナール(Gentil Bernard):ルオーの世界 |
「優しいベルナール(Gentil Bernard)」と題したこの絵も、「うらぶれた旅のサーカス」シリーズの一点である。「小さいルイ」と比較すると、こちらは彩度をぐっと低く抑えている。そのため全体として暗い雰囲気に見える。構図のほうはほとんど同じで、色彩感が正反対ということだが、そうすることでルオーは何を意図したのか。 絵の雰囲気が暗いわりに、モデルの顔つきが優しいので、彩度の低さをあまり強く感じさせない。表情は、口元がほころんでいるために、微笑んでいるように見える。このモデルも目を斜め前方に向けているので、そちらの方向にいる人に向かって微笑みかけているのかもしれない。 背景には、グリーン系とブルー系の寒色を使っている。だから、モデルの顔を鮮やかな暖色で塗ったならば、ドラスティックなコントラストが生まれて、顔が浮かび上がって見えたに違いない。それをこのように彩度を低く抑えることで、コントラストを和らげたことには、どんな意図があるのか。 よく見ると、絵具の厚塗りが利いている。ナイフを用いて絵具を厚塗りしながら、それをカンヴァスの上で混色したのだろうと思われる。輪郭がややぼやけて見えるのは、この厚塗りのせいである。 (1952年 カンヴァスに油彩 40×24㎝ ブリュッセル、ベルギー王立美術館) |
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