壺齋散人の 美術批評
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オンフルールの夕暮:スーラの点描画





「オンフルールの夕暮」と題したこの絵は、オンフルールの町の西の郊外に広がる浜を描いたものだ。この絵でもスーラは、港町のたたずまいではなく、何気ない海景を淡々と描いている。

水平線を中軸として横の線がいくつも重なっているが、それと調和をとるように多くの垂直線が引かれている。それら垂直線はいづれも短いものなので、構図上のバランスのためと言うより、画面に変化をつけるためのアクセントのような印象を与える。そのため、画面は全体として静かな印象を与える。

水平線に落ちる太陽そのものは姿を見せず、その残影が海上の光りとなって反映している。その光りは、単に海の一部を明るくするばかりでなく、手前の砂や、さらにその手前の額縁までも明るく照らしているように見える。

この額縁の部分は、後日描き加えたものという。スーラがなぜ、このような風景画にまで、額縁を加えたか、詳しい動機はわからない。ともあれ、画面本体よりもこの額縁部分のほうが、念入りに点描が施されている。

(1886年 カンバスに油彩 65.4×81.1cm ニューヨーク近代美術館)




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