壺齋散人の 美術批評 |
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ポール・アン・ベッサン:スーラの点描画 |
1888年の夏の数日を、スーラはドーヴァー海峡に面した漁村ポール・アン・ベッサンで過ごし、そこで六点の絵を制作した。この絵はそのうちの一枚、タイトルはずばり「ポール・アン・ベッサン」である。 オンフルールを描いたときもそうだったが、スーラはその土地の有名な風景には目をむけず、むしろ平凡な景色に目を向けた。そのため、わざわざこの土地でなくても描けたのではないかと、揶揄されることもあった。この絵も、ポール・アン・ベッサンの港の美しい眺めではなく、ありふれた風景を描いている。 もうひとつこの絵には、スーラらしい特徴を指摘できる。スーラは、風景画に人物を配することがあまり好きではなかったらしく、人物を配する場合にも、どこか投げやりのところがあった。この絵の中の人物もそうした投げやりな描き方の一例である。 何人かの人物が描かれているが、それらは互いに没交渉で、しかも動きに乏しい、人物というよりは、風景に色をそえる置物のように見える。 これは子どもを背負った女性の部分を拡大したもの。うつむき加減に歩いている女性が描かれているが、彼女は歩いているにかかわらず身体の躍動を感じさせない。まるで人形のように見える。 (1888年 カンバスに油彩 67.0×84.5㎝ ミネアポリス美術アカデミー) |
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