壺齋散人の 美術批評 |
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グラヴリーヌの運河:スーラの点描画 |
1890年、スーラは生涯最後の夏をドーヴァー海峡に面した港町グラヴリーヌで過ごした。グラヴリーヌは、カレーとダンケルクのちょうど中間にあって、ラー川を運河とし、運河沿いに港湾施設のある町である。この町でスーラは、午前、午後、夕方と刻々と表情を変える港の光景を、四枚の板絵と四枚のカンバスに描いた。 これはそのうちの一点。運河が海にそそぐあたりの景色を描いたものだろう。ポール・アン・ベッサンや他の風景画同様、この絵も人の息吹は感じられない。無機的な港湾施設や運河の流れが、乾いたタッチで描かれている。 遠景を薄くぼんやりと、近景を濃くはっきりと描くことで、遠近感を演出している。遠近感にあまり重きを置かなかったスーラとしては、珍しい。彼一流の、理論的探索を感じ取ることができる。 全体が、微細な色点で描かれている。雲の流れまでが点描で表現されているので、独特の雰囲気を感じさせる。その雰囲気には多少のぬくもりがこもっていて、人間不在の無機的な画面を和らげる効果を発揮している。 (1890年 カンバスに油彩 65.4×81.9㎝ ニューヨーク近代美術館) |
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