壺齋散人の 美術批評
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バルタサール・カルロス皇太子と矮人:ベラスケスの世界




ベラスケスは1630年の暮にローマを引き揚げ、帰国の途に就く。途中ナポリに立ち寄り、フェリペ四世の妹マリア・アンナの肖像画を制作した。王の命令によるものという。帰国したベラスケスは、バルタサール宮殿内の一角に専用の仕事場を与えられ、制作に励むようになる。1630年代は、画家としてのベラスケスにとって、もっとも充実した時代となる。

帰国後最初に手掛けた作品は、皇太子バルタサール・カルロスの肖像画であった。皇太子は1629年の10月に生れていた。その皇太子の肖像画を、国王はベラスケスに描かせようと思って、他の画家にはまかせずに、彼の帰国を待っていたと言われる。

「バルタサール・カルロス皇太子と矮人」と題された肖像画がそれである。矮人を配したのは、皇太子の引き立て役としてだろう。この時皇太子は2歳であったが、矮人に引き立てられて威風堂々として見える。

皇太子の頭を頂点にして、矮人と右端の白い帽子とがつくりなす三角系の構図の中に、皇太子がどっしりと収まるように工夫されている。画面全体が暖色で統一されており、しかも片寄りを感じさせないのは、ベラスケスの技巧のすぐれたところである。

(1631年 カンバスに油彩 136×104㎝ ボストン美術館)




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