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フェリペ四世騎馬像:ベラスケスの世界




レティーロ内の「王国の栄光と王たる徳のサロン」には、五点の騎馬像が飾られていた。先王フェリペ三世とその王妃マルガリータ、現王フェリペ四世とその王妃イサベル及び次代の王と嘱望される皇太子アルカーサル・カルロスを描いたものである。

「フェリペ四世騎馬像」は、東側の壁に扉を挟んで王妃イサベルの像と対峙する形で飾られていた。馬にまたがった姿を真横から描いたものである。このようなポーズは非常に珍しかったのであるが、フェリペ四世の意向に従ったと言われる。それについては、ローマで見たいくつかの騎馬像からも着想を得たらしい。

ベラスケスがフェリペ四世の騎馬像を手掛けるのはこれが二回目である。一度目は、1625年にアルカーサルを飾るために描いたのだったが、その折には、ライバルのテツィアーノに敗れるかたちで、アルカーサルを飾ることはできなかった。そんな事情もあって、今回は満を持しての制作だったわけだ。

構図といい、色彩といい、非常に完成度の高い作品である。前足を上げた馬からは強い躍動感が伝わって来る。その馬の躍動感にあわせるかのように、風景にもリズムが感じられる。しかも空気遠近法を駆使して、画面に深い空間を感じさせるように工夫されている。前景の馬と人物が暖色で表現され、それが寒色の背景から浮かび上がってくるように見える。

(1635年頃 カンバスに油彩 301×314㎝ マドリード、プラド美術館)




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