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バルターサル・カルロス皇太子騎馬像:ベラスケスの世界




「バルターサル・カルロス皇太子騎馬像」は、レティーロのサロンを飾る五点の騎馬像の中で最も出来の良い作品である。父王フェリペ四世の騎馬像が真横からの構図なのに対して、こちらは斜め前方から見た構図である。その為、人馬が背景から飛び出してくるような躍動感を強く感じさせる。

この馬も前足を上げているが、腹部が不自然なくらい大きく誇張されている。これは剥製の馬をモデルにしたためだと推測されるが、この絵の中の馬は疾走しているように見える。その疾走する馬にまたがった皇太子は、子どもながらも王者の風格を感じさせる。

というのも皇太子は、疾駆する馬にまたがっていながら、姿勢は安定し、また、王者の印である笏を右手に持つなど、威風堂々として見える。

前景と背景の組合せも絶妙だ。背景に広がる景色はスペインの荒々しい自然をダイナミックに表現している。しかも空気遠近法を駆使して、深い空間を演出しているため、人馬がいっそう躍動感をもって、見る者に迫って来る。

(1635年頃 カンバスに油彩 209×173㎝ マドリード、プラド美術館)




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