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フアン・マルティネス・モンタニェース:ベラスケスの世界




フアン・マルティネス・モンタニェースは、ベラスケスより40歳も年長の彫刻家で、ベラスケスの少年時代には、セビーリャを根拠地として活躍していた。そのモンタニェースが、1635年に宮廷より招待された。フェリペ四世の騎馬像の彫刻を作成するためである。

モンタニェースが作ったフェリペ四世の騎馬像の彫刻は、レティーロ内の庭園に設置された。そのポーズは、ベラスケスの描いた騎馬像と全く同じである。同じポーズを、ベラスケスは平面で、モンタニェースは立体で表現したわけである。

そのモンタニェースの肖像を、ベラスケスは描いた。マドリード滞在中のことだ。モンタニェースがマドリードに滞在したのは、1635年の半ばから半年余りのことであったから、この作品はおそらく1635年中に描かれたと思われる。

老彫刻家が、着手したばかりのトルソーを前にして、こちら側を見ているのは、モデルを観察するためだろう。トルソーは、やっと大まかな輪郭が現れたところだ。右手にもっている鑿で、更に彫り進んでいくはずだ。

なお、モンタニェース作成の騎馬像は、二本の後ろ足で立っているポーズが、非常にむつかしいとされ、その技術の高さが称賛されたものである。

(1635年頃 キャンバスに油彩 109×88㎝ マドリード、プラド美術館)




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