壺齋散人の 美術批評
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パブロ・デ・バリャドリード:ベラスケスの世界




レティーロ内には「道化の間」と呼ばれる部屋があって、そこには道化をモチーフにした作品が飾られていた。ベラスケスの作品も何点か飾られた。そのなかで最も有名なのが、「パブロ・デ・バリャドリード」と題するこの作品である。

一見した限りでは、道化のように見えないかもしれないが、当時の記録に道化役者として出て来るから、結構有名な道化だったのだろう。そう言われれば、この大袈裟なポーズは、道化役者を彷彿させもする。

ベラスケスには、晩年にかけて道化や矮人をモチーフにした多くの作品がある。ベラスケスにとって、親しみのある題材だったわけだ。その背景として、改宗ユダヤ人としてのベラスケスの出自に着目する見方もある。

この絵の最大の特徴は卓抜な空間処理だ。ベラスケスには、単純な背景に深い空間感覚を持たせる特技があったが、この作品にはそれが最大限に発揮されている。その空間処理をマネは模倣して、あの「笛を吹く少年」を描いたのだった。

(1634年以前 カンバスに油彩 209×123㎝ マドリード、プラド美術館)




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