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バリェーカスの少年:ベラスケスの世界




レティーロの離宮の造営とほぼ並行して、マドリード北部郊外にあったエル・パルドの狩猟場に塔が増築された。緑豊かな丘陵地にそびえたこの塔は、トーレ・デ・パラーダと呼ばれ、その内部には170点あまりの美術品が展示された。中心となったのは、ルーベンスとその工房の作品であるが、ベラスケスの作品も11点展示された。

「バリェーカスの少年」と題されたこの絵は、トーレを飾っていたベラスケスの作品の一部。矮人をモチーフにしている。この作品を含めて、トーレ二階の第一室は、ベラスケスによる矮人や人物の肖像画四点が展示されていたという。いづれも坐像のポーズである。

モデルの本名は、フランシスコ・レスカーノといって、バスク地方生まれの矮人である。クレチン病にかかっており、いつも頭を揺らしていたという。王子バルターサル・カルロスの遊び相手として宮廷入りした。

モデルは頭をそらすようにして、こちらのほうを見ている。おそらく病気のために、頭を固定することができないのであろう。姿勢も不安定だ。背景の景色は、トーレ周辺のグァダラーマ山系の自然であると思われる。

(1639年頃 カンバスに油彩 107×83㎝ マドリード、プラド美術館)




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