壺齋散人の 美術批評
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マリアナ・デ・アウストリア:ベラスケスの世界




フェリペ四世は、1649年にオーストリア・ハプスブルグ家のマリアナと再婚した。マリアナはもともとフェリペ四世の息子で皇太子であったバルターサル・カルロスの婚約者だったが、バルターサル・カルロスが死んだため、跡継ぎのいなくなったフェリペ四世が、自分の妻にしたのだった。結婚したとき、マリアナはまだ十四歳だった。叔父と姪の近親結婚であった。

彼女を描いたこの肖像画は、長女マルガリータ・マリア・テレサが生まれたすぐ後に描かれたものだ。十六歳か十七歳の頃だろう。妊娠で膨らんだ腹部を隠すために、輪骨スカートを巧みに利用している。

表情には、ハイティーンらしいすがすがしさは感じられず、かえって鬱屈している様子が伝わって来る。強く期待されていた王子を生むことができなかったことへの悔いのためであろうか。彼女は生涯に五人の子を産むが、そのうち一男一女が成長した。三男のカルロスが、スペイン・ハプスブルグ家最後の皇帝カルロス二世になっている。そのカルロスは、近親結婚のために病弱だったせいで、マリアナが摂政を長くつとめた。

(1652年頃 カンバスに油彩 243.2×131.5㎝ マドリード、プラド美術館)




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