壺齋散人の 美術批評
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ホロフェルネスの首を持つユディット




クラナッハは、「ホロフェルネスの首を持つユディット」と云うテーマの絵を、とくに1530年以降、非常に多く描いた。それらには、切断された男の首を得意げに持つ、若い女性の表情が描かれている。

ユディットという女性を巡る物語は、旧約聖書の「ユディト記」に出てくる。アッシリア王ネブカドネッサルが、自分に敵対する国々に討伐軍を差し向けたが、ユダヤにはホロフェルネスが差し向けられた。ユダヤ人たちは、降伏することを決意するが、その時に一人の女性が立ち上がって、敵軍の陣地に忍び込み、敵将ホロフェルネスの首をはねてしまったのである。将軍を失った敵軍は退却、かくてユダヤは討伐を免れたという話である。

この物語のテーマを何故、クラナッハが繰り返し描いたのか。色々な推測がなされているが、もっとも有力なのは、宮廷の貴婦人たちの肖像画だとする解釈である。貴婦人たちから肖像画の注文を受けたクラナッハは、ただ単に婦人たちの表情を描くだけではなく、彼女らをユディットとだぶらせることによって、その気高さを表現しようとしたというわけである。

ユディットとホロフェルネスの関係を、サロメとヨハネの関係に置き換えたものもあるが、こちらは恐らく、貴婦人達には余り評価されなかっただろうと思われる。

(1530年、板に油彩、75×56cm、ベルリン。ヤークトシュロース・グリューネワルト)





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